主に津波、水害への対応、その後の復旧・復興過程における体験の語り継ぎについて、ミュージアムの取り組みを学びあい、展望と課題を考える。

コーディネーター

立木茂雄

同志社大学社会学部教授 Ph.D.(トロント大学)

略歴同志社大学立木研究室ホームページより):
1955年兵庫県生まれ。 1978年関西学院大学社会学部卒。 同社会学研究科修士課程修了後、カナダ政府給費留学生としてトロント大学大学院に留学。 同博士課程修了。 関西学院大学社会学部専任講師・助教授・教授を経て2001年4月より現職。

コーディネーター

マリー-ポール・ユングブルート

ルクセンブルク市歴史ミュージアム 副館長

略歴
歴史学専攻。ゲッチンゲン大学と欧州大学院(フィレンツェ)にて歴史学、ドイツ哲学、心理学を学ぶ。 1992年からルクセンブルク市歴史ミュージアムで学芸員を務める。 2009年から同副館長。 シェンゲン欧州ミュージアム(2010年6月13日開館)外部学芸員、2010年上海万国博覧会ルクセンブルク館シェンゲン協定25周年展示外部学芸員。 2004年から歴史考古学博物館国際委員会会長。

語り継ぐ-命を救う

ハワイでの津波被害:1946、1960

津波についての知識を持ち、意識を高めれば、ハワイの人々が二度と津波で死ぬことはないであろう。」

太平洋津波ミュージアムは、対話式展示と解説員の説明によって語られる生存者の体験談を通して、この使命を果たしている。 太平洋津波ミュージアムは、「津波」に関する中心的な施設であり、また、地方色豊かなミュージアムの好例と言えるであろう。

発表資料(パワーポイント - 英語)

ドナ・W・サイキ

太平洋津波ミュージアム 館長

略歴
元教師で、太平洋津波ミュージアムのボランティア館長。1960年からハワイに在住し、34年間学校経営に携わる。 教育、コミュニティ、教会への尽力は高く評価されており、ヒロの多文化にまたがるコミュニティ内に様々な仕事上のネットワークを持っている。

関連情報
太平洋津波ミュージアム

浜口梧陵から学ぶ心と防災

安政南海地震津波:1854

濱口梧陵は安政南海地震のときに何をしたか。 その後、彼はなぜこれほどまでに直ぐに防潮堤防を築造したか。 その行動から私たちは何を学ぶのか。

東海、東南海、南海地震の発生が迫っている。 津波に遭遇するのは、浜辺の住民だけではない。

稲むらの火の館の見学で津波災害について認識を深めてほしい。

発表資料(パワーポイント - 日本語英語

丸山篤

稲むらの火の館 館長(2010年3月31日まで)

略歴
1944年島根県生まれ。 現在は、私自身も津波被害地域の真っただ中に住んでいるが、津波にあった経験はない。 見学者に濱口梧陵の概説を説明し、多くの人に喜んでいただいている。

関連情報
稲村の火の館

津波の怖さを~未来の子供たちへ

北海道南西沖地震津波:1993

雲仙普賢岳噴火災害時の被災状況や住民の行動を住民の目線で記録するとともに、体験した人にしか分からない真実を語り継ぎ、また三宅島や有珠山の住民とも連携し災害体験を共有する活動を行ってきた。

噴火から20年近くが経過し、噴火災害を知らない子供たちに、雲仙普賢岳の噴火災害の体験と教訓を各学校などで語り継いでいる。 また雲仙岳災害記念館の修学旅行生などの来館者に対する災害の語り継ぎ活動を行っている。

発表資料(パワーポイント - 日本語)

竹田彰

北海道 奥尻町役場 総務課長

略歴
私は、1993年7月に発生した「北海道南西沖地震」で被災を受けた「北海道 奥尻町」から来ました、奥尻町役場に勤務しております総務課長の竹田彰です。

災害後約7年間、まちづくりの企画や計画に当時係長として携わりました。私自身も仮設住宅に3年間一家6人で生活を余儀なくされた経験をもっております。

タイ、カオラックの国際津波ミュージアム

インド洋大津波:2004

he International Tsunami Museum in Khao Lak, Thailand was established in the wake of the Indian Ocean Tsunami. The museum promotes awareness about tsunamis, tsunami preparedness, and the world response following the Indian Ocean Tsunami. Exhibits help people understand the event that changed so many lives by showing (a) how the tsunami formed and affected the environment; (b) how businesses and individuals around the world provided aid; (c) warning signs of a tsunami (d) how to evacuate; and (d) the Indian Ocean tsunami warning system. Exhibits also show hope, resilience, and the human spirit. Dr. David Sattler (Professor of Psychology, Western Washington University) established the museum, and he and his students' created the exhibits. Exhibits are in English and Thai. The museum received very positive reviews. Thailand's Phuket Gazette newspaper wrote, "In a subtle and ethical way, visitors are introduced to the tragic events of the December 26, 2004 tsunami." Schools bring children to the museum for class projects about tsunamis.

発表資料(パワーポイント - 英語)

デイビッド N. サトラー

国際津波ミュージアム館長、西ワシントン大学心理学科教授

略歴
Dr. David N. Sattler, Ph.D. is a disaster researcher and Professor of Psychology at Western Washington University. He is Associate Editor of Natural Hazards Review, served on the Editorial Board of the Journal of Traumatic Stress, and is a member of the American Society of Mechanical Engineers Innovative Technologies Institute Standards Committee to develop a Risk Analysis Standard for Natural and Man-Made Hazards to Higher Education Institutions.

語り継ぎとアチェ津波ミュージアム

インド洋大津波:2004

インドネシアのアチェ沿岸地域は、リヒタースケール8.9を記録した壊滅的な海底地震によって、大打撃を受けた。 3千もの村や都市が全壊または重大損壊し、死者や負傷者、住む家を失った人の数は、他のどの国や地域よりも多かった。 この地震は、近代人類史上、最も死者を出した自然災害となり、その結果、この未曽有の災害の被災者に対して、世界中から同情と手厚い援助がもたらされた。 世界各地の過去の教訓が活かされ、アチェの復興の手助けとなった。 そういった知識ベースの教訓は、後の世代が学ぶことのできるよう、博物館や研究センターで記録、保管、調査されるべきである。

アチェ住民が災害からの立ち直るその強さと早さのシンボルとして、また、国際的な津波研究センターとして、アチェ津波博物館は、博物館施設、語り、映画、映像、遺物、音楽、文化行事、記念物、芸術作品といった形で、生存者の体験を記憶、伝達する重要な手段となっている。 このような活動は、現地の歴史と体験を具体的に伝え、人々の絆や、自然との共存の意味に対する理解を深め、命の大切さを再認識させるものである。 語り継ぐことはまた、復興への取り組みを強め団結心を生む一方で、環境保護意識を向上させる。 被災者の実体験と教訓を記録し、普及させることは、より広い社会にとっても貴重な活動である。

残念ながらアチェ津波博物館は、防災に関する体験や教訓を記録し、普及するといった点については、教育や復興の一助となるべき役割を果たしていない。 政府ならびに国際社会を取り込み、堅実で信頼できる博物館運営を実現し、知識ベースの情報と科学的アプローチのオープンソースとして相互学習を促進していくことが課題である。

発表資料(パワーポイント - 英語)

ラマダニ

インドネシア・アチェ観光文化庁観光振興部長

略歴
インドネシア・アチェ州政府官僚、アチェ観光・文化局マーケティング部アチェ観光促進担当官。 AusAid(オーストラリア国際開発省)の奨学制度によって、大学院で観光経営を専攻(経営学修士)した。 アチェや海外の数多くの観光部門で活躍しており、アチェやインドネシア国内外のセミナー、勉強会、研修等に、講師や参加者として参加。 アチェ津波博物館が、防災に関する実体験と教訓を記録し、より広い社会へ普及させ、教育と復興の一助となる役割を果たすべきであるという強い意欲と覚悟をもつ。

関連情報
ラマダニ氏ブログ

洪水ミュージアム:記憶、教訓そして未来

ゼーラント州高潮・洪水:1953

発表資料(動画 - 英語)

スリランカ・テルワッタ津波フォト・ミュージアム

インド洋大津波:2004

発表資料(パワーポイント - 英語)

リア・ゲルク

オランダ洪水ミュージアム コーディネーター

略歴
リア・ゲルクは1953年の洪水で大きな被害を受けた農家で生まれ育った。 被災後一家はほとんど3年自宅に住むことができなかった。 リアはアムステルダムのSciale Academieで学び、オランダのいろいろなところで働いた。 1980年に自宅に帰り様々な活動を行った。2001年に開館したOuwerkerkのオランダ洪水ミュージアムの創設者の一人でもある。 6年間理事長を務め、任期の後半にはミュージアム拡充のリーダーとなった。 「水:その過去、今日、そして将来」をテーマとしたミュージアムの拡充は2009年4月に完了した。

関連情報
洪水ミュージアム(オランダ)
スリランカ・テルワッタ津波フォト・ミュージアム

展示「ハリケーンと生きる~カトリーナ、そしてその後~」

ハリケーン・カトリーナ:2005

今回の発表では、ニューオリンズのルイジアナ州立博物館で2010年10月開催予定の展示、「ハリケーンと生きる~カトリーナ、そしてその後~」を中心に話しをする。 2005年のカトリーナとリタの2回のハリケーンによってもたらされた混沌と破壊について、また、ルイジアナ州の過去の洪水・ハリケーンの歴史の中におけるこの2回のハリケーンの位置付け、そしてこの災害の背景にある理由(自然、人類学的見地から)について説明し、ニューオリンズ市民とルイジアナ州がとるべき姿勢について模索する。 展示では、ハリケーン・カトリーナに「教訓を得るのに適したケース」としての役割が与えられる。 すなわち、土木工事、緊急事態計画、環境活動の失敗例として、また、これらの失敗から、世界中の人々が学び、より安全な未来を確実に建設していくために、一般市民、科学専門家、その他の人々が行ってきた膨大な取り組みにスポットをあてる機会としての役割が与えられている。 博物館の狙いは、見学者がハリケーンや洪水を理解し、それらに備えることができるよう行動を起こすことである。 また見学者に、国家として、また世界的にも災害に対する備えがいかに重要であるかということを考えさせる機会にもなる。

展示の持つ役割を強化、拡大するために博物館は、ロードアイランド大学海洋学研究科海洋プログラム研究室と協働する予定であり、包括的で、豊富なコンテンツの、総合的教育ウェブサイト「Hurricanes: Science and Society(ハリケーン:科学と社会)」を製作中である。 同サイトは、幼稚園、小中高校、大学の教育者ならびに学生向けに作られるものであるが、一般市民も利用可能であり、最新の科学技術についての理解を高め、ハリケーン襲来時と予告時の的確な決断の一助となるものとなろう。

発表資料(パワーポイント - 英語)

カレン・リーゼム

ルイジアナ州立ミュージアム歴史学芸員

略歴
ルイジアナ州立博物館勤務の歴史学博士。 近日開催の展示「ハリケーンと生きるーカトリーナ、そしてその後」の歴史学者リーダーで、過去にルイジアナの歴史と文化に関する多数の展示を行ってきた経験をもつ。 最近の出版物は、 「New Orleans Cuisine: Fourteen Signature Dishes and Their Histories(ニューオリンズ料理:14の代表料理とその歴史)」(2009年、ミシシッピ大学出版)、 「Louisiana Women: Their Lives and Times(ルイジアナの女性:その生き方と時代)」(2009年、ジョージア大学出版)掲載の評論等がある。

関連情報
ルイジアナ州立博物館

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2日目:各地からの報告と討論