2020世界災害語り継ぎフォーラムの開催について
はじめに
災害は多くの命を一瞬にして奪い、人々が幾世代にもわたって築きあげてきた地域社会や日々の暮らしを凄まじい力で破壊してしまう。一方、苛烈な災害の経験を経て、毎日を大切に生きることの大切さや自然と共に生きていく事の意味など、平常時には思うことの少ない重要な事に気付くきっかけにもなる。知識として理解している防災の方策を実際の行動に移すための強い動機となり、被災地のより良い復興や災害に強い地域づくりを進めていく原動力にもなる。私たちは阪神・淡路大震災を始めとする多くの災害の体験を経てこのことを痛切に実感した。
多くの人々が災害の体験や教訓を他の地域や将来の世代に語り継ぐ努力を続けてきた。写真や映像、遺留品などの事物、楽曲や絵画、記念碑などを通じた語り継ぎも重要である。世界各地の被災地で多くの人々や組織が同じような活動を行なっている。私たちは、このようなことに取り組む人々や組織による国境を越えた交流や学び合いを支援し、声を合わせて語り継ぎの大切さを訴え、災害に強い社会の形成に資することを目的として、2006年に世界災害語り継ぎネットワーク(International Network of Telling Live Lessons from Disasters:TeLL-Net)を設立した。2010年には日本国内外22か所の被災地から約150名の参加を得て始めての世界災害語り継ぎフォーラムを神戸で開催した。
2015年3月には第3回国連世界防災会議があり「仙台防災枠組 2015-2030」が採択された。伝統的・在来・地域固有の知識や慣習が災害リスク評価にかかる科学的知識を補完するために活用されるべきなど、災害の記憶の語り継ぎに関連する記述も盛り込まれた。持続可能な開発目標(SDGs)への対応やESG投資の促進が求められる中、企業経営においても過去の災害を十分に踏まえた対応を行なっていくことが求められるようになっている。
他方、私たちの思いとは裏腹に、2011年には東日本大震災とそれに伴う大津波が発生し、死者・行方不明者18千人を超える近代以降の日本では稀に見る大災害となった。2013年には猛烈な勢力となった台風ヨランダがフィリピンを直撃し、死者・行方不明者8千人の被害をもたらすこととなった。2015年には世界の最貧国の一つであるネパールを大地震が襲い、死者8,500人を超える災害となった。2016年以降も引き続き日本全国及び世界各地で水害や地震、火山噴火、津波などの災害が発生し多くの人々の命が奪われている。
目的
阪神・淡路大震災25周年となる2020年1月、神戸の地で、世界各地で実際の災害体験の語り継ぎに取り組む人々や組織が一堂に会して交流・連携を深め、新たな取り組みや知見、動向について共に学び、声と力を合わせて語り継ぎの大切さを訴え、災害体験の風化と闘いながら語り継ぎを継続し深めていく思いを新たにし、災害に強い社会の形成に資する。また、そのような目的を実現するための自律的なメカニズムであるTeLL-Netの活性化を図る。さらに、議論の成果を日本語・英語で出版し、世界各地の語り継ぎの活動に資する。
フライヤー
フライヤーは以下のリンクよりダウンロードいただけます。